友達、青空、安ウマご飯! – 旅するシンガーソングライター|内田美穂
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友達、青空、安ウマご飯!

「ミホ!ミホ!」

今朝は私を呼ぶ声で、目覚めた。

 

「朝ごはん!朝ごはん食べないとだよ!起きて!私、パンあるから!」

 

ムーンの後についてロビーに向かうと、彼女はパンと昨日のアイスクリームを出してくれた。

それをパンに塗って食べる笑笑

ムーンは、最初に会った日から、何かとご飯や薬などをくれた。

「友達なんだから、当たり前でしょ。あなたは若いし、一人で旅してるんだから、助けが必要に決まってるわ。」

 

私は、ムーンを、お母さんのように思った。

 

 

お昼前、ホステルのロビーへ行くと、たまたまサイードに出くわす。

 

彼は、私と目が合うと、数メートル離れた場所で、黙ったまま、手で、「ご飯食べた?」

のジェスチャーをした。

 

日本にはこのポーズはないのだけれど、

手を口の前に持っていき、親指と、一緒にくっつけたその他の4本の指を、閉じたり開いたりする。

 

手でご飯を食べる文化のある、マレーシアやインド特有の表現かもしれない。

 

インド人やマレーシア人はよくこのジェスチャーをする。

 

私は、

「You mean lunch? not yet!  Do you wanna go with me??」

とでかい声で言った。

 

続けて、

「ちょっと待ってて!財布取ってくる!」

 

と言って一旦部屋に戻った後、私たちは一緒に外に出た。

 

 

それにしても、日差しが強い。

東南アジアの昼時の日差しは、日本の夏とは比べものにならない。

 

彼が「何を食べたい?」

と聞くので、

「安いものならなんでもいい」

と言うと、

 

「オッケー!僕も何か安いもの食べようと思ってたんだ。うん。オッケー!いい場所があるからついてきて!」

 

そうしてついたのは、道端の木陰にある、青空食堂だった。

 

トタンで出来た小さな小屋のような建物と外にテントを張って、その下のテーブルに料理を並べただけのシンプルな食べ物屋さん。

 

小屋の中には、コンロが置いてあり、油の入った鍋は、建物の外に出してあった。

 

手を洗う場所は、外に置いた、スポーツの試合などでよく使うジャグの水。

超シンプルな食べ物屋さんだ。

 

私はその感じにちょっとテンションが上がった。

 

「こーゆーとこめっちゃ好き」

 

と私が言うと、彼は

 

「そうでしょ?何より安いのが良い!

それに超地元っぽくて良いでしょイヒヒヒヒ」

 

と笑った。

テーブルには、でっかい魚や、揚げたチキン、カレーなど、いろんな種類の食べ物が並んでいる。

 

 

 私は、とりあえず、ご飯と、野菜だけお皿に持って、カレーのスープをご飯にかけた。

魚やチキンは高いのと、マレーシアでは、カレースープは具材を取らずにスープだけなら無料だから笑

 

私たちは、青空の中の木陰の下、美味しいご飯とともにおしゃべりしながらお昼を食べた。

最高な日だ。

 

もちろんフォークなど使わない。手づかみだ。

 

サイードは、

 

「僕がインドにいた頃はね、クレイジーなくらいに仲が良すぎる男友達たちと、いっつもこう言うご飯を手で分け合ってたんだよ。

1つのお皿のご飯をみんなでシェアするんだ。

食べ物は一瞬でなくなるよ!

もうほぼ取り合いみたいのもんさ。

で、時々喧嘩になったりもする。

 

けど、それが仲良しの証拠なんだよ!

 

 

あー懐かしい!!しかも、時々、手でご飯を掴んで、友達の口にあーんってしたりするんだ。

 

それに、2つのベッドに3人で寝たり、膝枕したりもしててさ。

 

僕らにはそれが普通だけど、マレーシアに来てから、他の国の旅人とかが見ると、お前らゲイなのか?って聞くんだよ。

それくらい、僕には仲良い親友たちがいるんだ。

あーみんなに会いたい!」

 

とノンストップでベラベラ喋った笑

 

その表情は、明るく、心底嬉しそうだった。

 

私は、そんな彼の話を聞くのが大好きだった。

 

 

途中で、

「君は子供っぽいところがあるよね。

それと、素直だ。それで、芯があって強い。頭がいい!

うん!君はいい心の持ち主だよ。

グーッドだ。グーッド、それを大事にしてほしいよ!」

 

と褒めてくれた。

 

私は、何故かわからないけど、そこで急に涙が出てきた。

 

この時期の私は、実はちょっと悩んでると言うか、悲しい出来事があったと言うか、とにかくしばらくの期間、ちょっとだけいつもの自分じゃなかったこともあるかもしれない。

 

だからなのかどうか分からないけれど、

 

彼に、

 

心が綺麗だ。

 

と言われた瞬間、涙が出てきたのだ。

 

 

そんな私を見て、彼は

「なんで泣くの???泣くな泣くなDont cry! 僕、何か傷つけちゃった?」

と大慌てだ。

 

そして、戸惑ってしまったのか、

 

「オッケーオッケーレッツゴー!

歩こう歩こう!Walk!Walk!」

 

と言ってとにかくホステルに帰ろうとした笑

 

 

ホステルまでの帰り道、その後は、その話題には触れず、たわいもない話をしたのだけれど、彼は急に

「ところでさっきはなんで泣いたんだい?僕、何か傷つけるようなこと言っちゃった?」

と心底不思議そうに聞いてきた。

 

私は、「うーん、うまく答えられないけど、悩みを取り除いてくれた気がするから」

と答えた。

 

彼は

「きっと、自分で、自分の心は良くないって思ってたんでしょ?

だけどそんなところに、僕が、君はいい心の持ち主だって言ったから泣いちゃったんじゃない?」

 

と言う。

 

なぜか、彼の方が、私よりも上手く自分の心の中を言い表してくれる気がした。

 

これは、この日だけでなく、それから親友になるに連れても同じだった。

 

「おーーー!多分その通り!!」

私がおどけて言うと、彼は、

 

「いえーあ、そうだと思ったよ!イヒヒヒヒ」

と言って笑っていた。

 

 

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この記事を書いた人

旅するシンガーソングライター

1994年生まれ/埼玉県出身。 高校生の頃から、ラジオやライブハウスに出演し、シンガーソングライターとして活動。 ​早稲田大学を卒業後、一年のギャップイヤーを経て、2018年4月に広告会社に入社するも、世界一周を決行するべく退職。 現在は、ギター弾き語りで旅費を稼ぎながら、世界一周中!エベレスト等ヒマラヤを二度登山したりと「やらない後悔よりやった後悔」がモットーの旅人。 もっと見る

  uchidamiho2929@gmail.com

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