バイバイ、バダール
バタールも、このホステルでの仲良しさんの1人だ。
そして何より、サイードの大親友でもある。
イタリア人とモロッコ人のハーフの彼は、イタリア語とアラビア語が堪能。英語もそこそこ話せる。
見た目からは意外かもしれないけど、
実は彼、相当熱心なイスラム教徒。
元々は、かなりやんちゃだったらしいんだけど、
イスラム教に改宗してから、全く悪いことをしなくなったんだって。
相当派手に色々なことをしてきたらしいんだけど、
彼のお父さんがバダールの頭に手を当て、コーランの一節を唱えた時に、
「自分のしてきたことって一体なんだったんだろう。」
って反省したらしい。
ムスリムになった瞬間に、世界が全く違うものに見えたんだとか。
昔は、クラブで相当遊んだり、悪いこともしたりしたらしいけど、そんなことが一切くだらないことに思えるようになったらしい。
「本当の人生とは何か」みたいなことがわかるようになったって言っていた。
今では彼は、毎日毎日、
コーランの朗読オーディオを何時間も聞いている。
私がロビーのソファで何時間もブログを書いていると、
彼も何時間も同じソファに座って、コーランの朗読をじっと聞いているのだ。
そしてそれが終わると、今度はコーランの書かれた大きな本を読み出す。
そんな彼と一緒のソファにずっと座っている私は、いつもイスラムのことに興味津々だった。
私がイスラムのことについて質問すると、
いつも丁寧に、イスラム教のあれこれを教えてくれるのだった。
イスラム教では、結婚前に女性と関係を持つことがあまり良しとされていないので、今は彼女も作らないのだとか。
それに、外国人って、相当いろんな場面でハグをするのね。
日本人からするとちょっとハグってあれかもだけど、外国だと普通。
ほっぺや手の甲にキスをすることも全然ある。
でも彼は、ハグさえしない。
特にラマダンの期間は、握手でさえも断られたほどだ。
それに、彼は、一日5回、必ずモスクに出向いてお祈りをする。
(夜明け前の、時間にもお祈りの時間はあるのに、その礼拝の時間も欠かさない)
イスラム教の教えでは、
基本的に1日5回、メッカのある方角を向いて、礼拝をすることになっているのだが、
なかなか1日5回、きちんとお祈りをする人ばかりではない。
特に若い人なんかは、1週間に一回しか礼拝をしない人もいる。
毎日きちんと5回礼拝している若い人は、かなり珍しいんじゃないか。
今日はそんなバダールのチェックアウト日。
彼は今日、ヨーロッパへの旅へと出発する。
それを聞きつけたサイードは、昨日チェックアウトしたばかりだというのに、
バダールを見送るために、1時間以上かけてホステルまで会いに来たのだ。
サイード、バダール、オマールは、このホステルでの3人トリオ。
3人揃って大親友。
どんな時もふざけあって、理解しあって、楽しそうに笑っていた。
そう、私たちは、いつでもふざけあっていた。
冗談を言って、時々ちょっかい出して、からかったりして。
イスラム教徒の多くが、日常会話中に、
「アルハンドゥリラ」
(『アッラーに感謝を』の意味。例えばくしゃみをした後に、『悪い物を体から出してくれてありがとう』の意味で使ったり)
「インシャアッラー」
(『もし神のご加護があればね』『アッラーが決めることだから、アッラーのご加護があればね。』などの意味。例えば、『また会えるといいね、インシャアッラー!』などの様に使う)」
「マーシャアッラー」
(神が恵んでくれたおかげだ。素晴らしい!などの意味。例えば、『君は本当に美しい。マーシャアッラー』などのように使う)
「ワッラーヒ」
(アッラーに誓っての意味)
などのフレーズを本当に頻繁に使う。
日常会話でもだ。
きっとムスリムと生活する機会があれば、1日に少なくとも10回は聞くだろう。
私は、彼がよく言ってたそれらの言葉をもう聞けなくなってしまうことが寂しかった。
バダールが旅たつ前、私たちは、マクドナルドに行った。
バダールは、ソフトクリームが大好き。
今日は旅立ちの日だからって、みんなにアイスをおごってくれた。
そして、バダールをバスターミナルまで送りに行く。
そうして彼は到着したバスに乗り、颯爽と旅立っていった。
またどこかでね!インシャアッラー!!
その後、私とサイードは、またテキサスチキンへ向かい、数時間おしゃべりした。
この日私は彼に、
「前さ、私のいいところって、偽りがないところと子供っぽいと言うかお茶目なところって言ってたじゃない?でも、なんか最近、それがなくなってきてる気がする。」
とボソッと言った。
すると彼は、
「それはなくなる物じゃない。君の血の中に、DNAの中に、もともと組み込まれてる者だから平気!
今この瞬間だって、君はお茶目だし、偽りがないよ」
と言ってくれた。
その後、サイードはまた1時間かけて自分のアパートに帰っていった。
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