Monday Promiss〜月曜日の約束〜 お別れ、そして涙。 – 旅するシンガーソングライター|内田美穂
旅するシンガーソングライター

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Monday Promiss〜月曜日の約束〜 お別れ、そして涙。

ギターを持って走って帰ると、

サイードは、ホステルの外のテーブルで、みんなとおしゃべりしていた。

 

私は彼の隣の椅子にちょこんと腰掛ける。

 

私に気づいたサイードは、私の手にしていたオレンジジュースを見つめていた。

私はすぐに彼が何を思ったのかがわかったので、

「これ、歌ってたら、もらったの。ギターケースに入れてくた人がいてね」

と説明した。

 

「そうか。だからか。不思議だったんだよ。ミホがオレンジを自分で買ったりするんだ」

ってね。

 

「そう思ってるんだろうなって思ったよw

こんなに節約中の私が、オレンジジュースなんて自分じゃ買わないよ。」

 

「だろうと思った」

 

「でも、自分じゃ絶対に買おうと思わないからこそ、久しぶりに冷たいオレンジジュースが飲めて、超ハッピー!!

あー冷たい、美味しい。ちょっと飲む?」

 

「いらない」

 

そんなやりとりをして、私たちは、テキサスチキンへと向かった。

だって、そこは私たちの思い出の場所だから。

 

 

テキサスチキンに向かう途中、大きな交差点で、向こう側に渡れるタイミングを待ちながら、

「これで最後だね」

と、私たちは言った。

 

 

車が途切れるタイミングを待つのに集中しているので、

半ば、うわの空だったけど。

 

 

車が来ているのにも関わらず、私たちはゆっくり交差点の中に入っていく。

完全に車が途切れるのを待ってから渡るのではなく、

車の方が私たちに気づいて止まってくれるのを待つのが、東南アジアでの交差点の渡り方だ。

 

 

その大きな交差点を、走って渡りながら、半ば叫ぶように、私は、彼にこんな提案をした。

 

 

「ねえ。私たち、毎週月曜日に会ってたじゃない?月曜日、これからさ、会えなくなるから、毎週月曜日に電話をするっていうのはどう?」

 

彼はいつものにんまり笑顔になって言った。

「oh! that’s fu*king nice!! yea that’s  fuuu*king  nice!!」

 

「うん!マンデイプロミス(月曜日の約束)ね!!」

 

 

テキサスチキンに着くと、

私たちは、私たちが、一番最初に、ここでチキンを食べた時と、同じ席に座った。

 

テキサスチキンは、私たちの思い出の場所の1つだ。

ここで、色々なことを、何時間も語り合った。

 

 

「ここで君が、あの辛いチキンをハーハーこんな顔しながら食べてた時のことを思い出すよ」

と言って彼は、その時の私の顔の真似をした。

 

そして、

「いつも言ってるけど、そう言う子供っぽい仕草が、君のいいところ。」

 

と付け加えた。

 

私たちは、向かい合ってテーブルにとりあえず座ったのだが、

「僕、向かい合って座って話すの苦手。外で歩きながら話そう」

と彼は言った。

 

「女子と話すの慣れてないから、向かい合ってると普通に話せない」

とのことらしい笑

 

私のこと一応女子だと思ってたんかww

 

私たちは、夜の街をプラプラ歩いた。

 

 

時々冗談も言って、からかいあって、笑いあって、でも真面目な話もして。

サイードは、やっぱり最高の友達だ。

 

そして私たちは、私たちが、一番最初に、お昼ご飯を一緒に食べた、お昼になるとテントを張って、テーブルの上におかずを並べるだけと、とーっても簡素な、食べ物屋さんの前にたどり着いた。

 

夜になると、テントも、プラスチックでできたテーブルも仕舞われてしまうので、ガスコンロの置いてある小屋のような建物しかなかったが。

 

私は、

「ここ、覚えてる?」

と聞いた。

 

「僕も同じこと考えてたよ。最初の日のランチ。あの時急に君が泣くからさ、僕ほぼ逃げ出したよね笑」

と言って、彼は笑っていた。

 

私は、うんうん頷いた。

 

そして、そばの階段に私たちは腰をかけた。

 

そこで、しばらく、意味のない話も、意味のある話もして、時々爆笑して、時々真面目に話をした。

 

 

あと少しで、時間だ。

 

彼の終電が迫ってくると、彼は、立ち上がって、「そろそろ帰ろう」と言った。

 

私は名残惜しい気持ちになりながらも、彼と一緒に立ち上がって、すぐ目の前の、彼が乗って帰るべき電車の駅まで、彼を見送りに行く。

 

私は、駅の前で、何かをひたすらに彼に語っていた。

 

けれど、途中から、私は彼が、微笑みながらただ私の顔を見ていることに気がついたので、私はそこで話すのをやめた。

 

「何?」

と言うと、

「ごめん、今君の話、何も聞いてなかった。ただ、君がこうやって、喋ってる姿を、焼き付けとこうと思って!」

そう言った。

 

私は、それから、彼をまじまじと眺めた。

私よりも身長は低くて、ちょっとぽっちゃりで、ヒゲが生えていて、お腹が出ている彼を眺めた。

 

 

そんな私に彼は言った。

 

「絶対、連絡取り合おうね。

月曜日の約束、忘れないで。

そして、いつかまた会える日に、僕があげた本を持ってくること。」

 

そう言って、私とサイードは、固く固く握手をする。

彼はいつも通りの、ニンマリ笑顔。

 

 

その力強い握手の手を離すと、彼は、今にも行ってしまいそうだ。

 

私は、思い切って、

「ハグ!」

と言って、彼とハグをした。

 

 

そう言えば、私、旅に出てから日常的に、誰とでもハグをしているのに、こんなに仲良いサイードとハグをするのはこれが初めてだった。

 

 

ぎゅーっと彼とハグをし終わると、

サイードは、

「バーイ!」

と明るく一言だけ言って、くるりと踵を返し、背中を向けて歩き出した。

 

 

きっと、寂しくなりたくなかったのだろう。

とってもあっさりした、私の中の勝手なイメージだけど、男の友情って感じの別れだった。

 

 

そんな彼の背中を見て、私は

「サイード!!!」

と一度彼を呼び止めた。

 

 

だって、あまりにも寂しいじゃない。

こんなにたくさん思い出があるのに、別れの言葉さえないなんて。

 

 

きっと、別れ際に、しっとりしたくないのが、彼の性格なのだろう。

 

 

私は、振り返った彼に、

「おいで」

の手招きをした。

 

 

するとサードは、不思議そうな顔をして戻ってくる。

 

私は、もう一回、彼とハグをして、

「バイバイ!私のこと忘れないで!また会おうね!!!」

と言った。

 

そして、ニヤニヤニンマリ笑顔で、また去っていく彼の背中に、大きな声で、

「またね!!!!ありがとう!!!」

 

と叫んだ。

 

 

周りの人が、不思議そうに私たちを見ていたけど、私は気にしなかった。

 

彼が角を曲がって、見えなくなったとき、私も反対方向を向いて、ホステルに向かって歩き出した。

 

 

 

するとその途端、目から涙がブワッと溢れてきた。

 

きっとまたどこかで会えるはず。

いや、きっとじゃない。

絶対にまたどこかで会いに行く!

だからこれはお別れなんかじゃない

 

 

そう思っていたのに、だから寂しくなんてないはずなのに、

なぜだか涙が溢れてきたのだ。

 

 

悲しくなんてないのに、それでも、なぜだか涙が出てきた。

 

 

私は、頭の中で、この時何を思っていたのか、よく思い出せない。

 

本当は、何も考えていなかったのかもしれない。

どうして泣いていたのかも思い出せない。

 

 

でも、とにかく、涙が溢れてきた。

 

 

覚えているのは、道路を渡る時、夜を照らす車のヘッドライトや信号が、涙で滲んで見えたこと。

 

 

私は、その足で、ホステルではなく、レストランに向かった。

 

このまま一人、ホステルには帰りたくなかった。

 

 

私がレストランに行くと、シェフのおじさんモハメドは、レストランの前で仲間とおしゃべりしていた。

 

私は、彼に、

「He’s gone」

と言った。

 

「今日がサイードとの最後の日だったの。」

 

そう言うと、余計に涙が溢れてきた。

 

うわんうわん子供のように泣いたりなどはしていない。

 

涙が、たくさん頬を伝っていたくらいだ。

 

それでもモハメドは、

「泣くな泣くな」

と、私をハグしてくれた。

 

 

私が、レストランの席に着くと、彼は

 

「今日が最後の日なんかじゃないよ。また会えるさ。

僕たちだって、また世界のどこかで会おうって約束したじゃないか。

君、マレーシアを出たって、また僕の料理を食べにくるだろ?

マレーシアか、中東か、どこかわからないけど、また僕の料理食べにくるって言ったじゃないか。

みーんな旅してるんだから、別れはたくさんあるよ。でも最後の別れなんかじゃない。

地球なんて狭いもん。

またどこかで会えるに決まってるんだから。Dont be sad. Smile Miho。

君は僕の娘のようなものだ。泣いてたら僕も悲しいよ」

 

と言ってくれた。

 

そして彼は、私に、この間も言っていた、あの冗談を言った。

「僕の仕事は、お母さんに手紙を書くことなんだ」

と言うあれ。

 

きっと私を笑わせてくれようとしたに違いない。

 

彼の冗談の内容が面白かったわけではないのに、

その冗談で私を慰めようとした彼が可愛らしくて、

クスッと笑ってしまった。

 

きっと彼からしたら、渾身のギャグで私が笑ってくれて嬉しかっただろう。

 

 

そんな私の笑顔を見た彼は、

「ほーら、笑った笑った。大成功」

と言い、続けて

「何か食べるか」

と私に聞いた。

 

 

 

私は、そこで自然に笑顔になったのが自分でもわかった。

「うん!食べる!!」

と、大きく返事をした。

 

彼は、私を笑顔にする方法を知っている。

 

私は、彼の料理と、彼の優しさが大好きだった。

 

 

そして彼は、マッシュルームを温めてくれた。

 

私がご飯を食べ終わると、

 

彼は、

「今日はお金はいらない。今日くらい、僕から何かさせてくれ。今日のご飯は、僕からの気持ちだ。お金はいらない」

と言った。

 

「何言ってるの?いっつもいっつも、散々色々してもらってるよ。毎日毎日、たった5RMでご飯を食べさせてもらってる。」

 

 

「いいや。知ってるか、毎日お皿を洗って返してくるのは君くらいだ。他の誰もそんなことしたことない。僕、それに対して君に払わなきゃいけないくらいだよ。」

 

お互い引き下がらない私たち笑

結局、

 

「明後日は君の最終日だ。最後のご飯だけは、僕からご馳走させてくれ」

 

と言うことで、合意し、

最終的には、いつもどおり5RMを受け取ってもらえた笑

 

6/24

 

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この記事を書いた人

旅するシンガーソングライター

1994年生まれ/埼玉県出身。 高校生の頃から、ラジオやライブハウスに出演し、シンガーソングライターとして活動。 ​早稲田大学を卒業後、一年のギャップイヤーを経て、2018年4月に広告会社に入社するも、世界一周を決行するべく退職。 現在は、ギター弾き語りで旅費を稼ぎながら、世界一周中!エベレスト等ヒマラヤを二度登山したりと「やらない後悔よりやった後悔」がモットーの旅人。 もっと見る

  uchidamiho2929@gmail.com

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