今度こそ、2ヶ月ぶりにギターと再会!!!
うわ!地震!
そう思って飛び起きると、私は真っ暗な部屋の二段ベッドの上段にいた。
スマホの画面で時間を確認すると、朝の7時半。
そのままスマホの明かりで部屋を照らし、あたりを見回すと、
金髪の女の人が、隣のベッドの上の段でスヤスヤ気持ち良さそうに眠っているのが見えた。
「ってことは地震じゃない?」
何が起こったのか確認しようと、
ベッドの柵から体を乗り出すように、私の下段のベットを覗き込むと、頭の両サイドを刈り込んだ、女性の割に随分マッチョな女の人が寝ていた。
どうやら彼女が、ものすごい勢いで寝返りを打ったようだ。
ホステルの安いちゃっちいベッドは、ただでさえ上段下段の振動が直に伝わってよく揺れる。
それなのに、このガタイの女性がドシンと寝返りを打ったのだから、地震と勘違いして飛び起きても仕方がない。
私は、彼女が私の下段のベッドを使っていた3日間の間、
ゆっくり眠ることができなかった。
夜中、彼女の寝返りで何度も起こされるからだ。
「悪気がないとはわかるけど。。。
いや、でもこれだけ酒によって帰ってきてドタバタしてるのは流石にいかがなものか。」
そう思っていると、彼女は今度はものすごい大きな声であくびをしだす。
酒に酔ったクラブ帰りで、酔いがまだ冷めていないのだろう。
彼女から漂う酒臭さが、部屋にかすかに充満していた。
フランス人だというその女性が、ベルギー人の女の子と、真夜中にドタバタ、酔った勢いで騒いでいたのは昨日のこと。
早朝5時前に、ものすごい勢いで扉を開け、彼女らはみんなが寝ていると言うのに、大声で話し、電気までつけたのだ。
その瞬間、
私の向かいのベッドの金髪の女性に、
「Can you fu*king turn off the light?(テメエら電気つけてんじゃねえ!)」
と一発すごい喧騒で怒鳴りつけられていた。
その後、彼女らは
「あ、ごめんなさい!」
と心底謝り電気を消すのだが、今度はまた大きな声でおしゃべりし始める。
酔っているからまあしょうがないのだが、いや、しょうがなくないのだが、
そこでもう一発
「Do you need talking? Can you fu*king talk outside? It’s fu*king late night!!(話さなきゃいけないんですか?話すなら外で話せよ!夜だってわかんねえのかよ!!)」
ともう一発すごい口調でお叱りを食らっていた。
彼女らは、もう一度ソーリーと言った後、外に出て行った。
ちなみに彼女たち、レズビアンのカップルらしく、
私の下段のベッドで、2人で一緒に寝て、何度もキスしてるのよ笑
しかもめっちゃ大きい音で。
私の真下でそれが起きてんのよ。
もうやめてくれって感じ。
二人で1つのベッドを使うのはまあ許容できるとして、
せめてごそごそ動いて上段の私を起こすのはやめてくれええ!
ちなみに、夜うるさいとか、静かにしろだとかって言ういざこざは、ホステルではよくある事。
トイレの使い方が汚いとか、シャワーの床が水浸しだとか、夜遅くまでうるさいとか、電気をつけるなとか、部屋で食べ物を食べるから部屋が臭くなるとか、目覚ましをかけるなとか、荷物で幅をとるなとかで、滞在者同士でしょっちゅういざこざが起こる。
もう半年ホステル生活してるけど、どこのホステルでも同じだ。
まあ、国も、性別も、年齢も、仕事も、旅の目的も、生活リズムも、性格も、何もかも違う赤の他人同士が、同じ部屋で生活するのだから当たり前といえば当たり前だ。
それに、ドミトリーに滞在しているのは、必ずしも旅慣れている人ばかりではない。
ドミトリーに慣れている人は、
「あー、これはよくあることだからいちいち気にしていてもしょうがない」
っていう風にだんだん気にしないスキルがついていくのだけど、
ホステルに慣れていないと、共同生活をする上での他人の欠点がどうしても気になってしまうのだろう。
そして、何をしたら人に迷惑をかける可能性があるかなどが、分からない人も多い。
まあ、これは、慣れてる慣れてないだけに限らないかもだけど。
でも少なくとも、ドミトリーに長く泊まっていると、他人の素行への許容範囲も広がっていく。
じゃないと、いちいち他人にイラついたり、注意してたりしたら、キリがないから笑。
他人を変えることは結構難しいし、新しい人がどんどん入ってきて、どんどん去っていくホステルでは、注意したところでどんどん他の人が入ってくるからね。
だったら、自分が、人のちょっとした気になる素行を受け入れられるようになった方が、断然手取り早い。
まあ今回、それはアカンだろうってレベルで夜中に騒いで、
金髪女性にきつく注意をされて、外に出て行った彼女たちだったが、
ドアの目の前で大きな声で話すので、彼女たちの声は、部屋の中まで丸聞こえだった。
威勢ががいいな。
まだもう少し、寝かせてくれよ、、、、
私はそう思って、もう一度眠りにつくのだった。
と言っても、それから数時間、騒ぎのせいでなかなか眠りにつくことができなかったのだが。
そんな私は、数時間後、今度は地震ではなく、違う意味で飛び起きた。
2回目に私が起きた時、もう昼の12時を過ぎていたからだ。
やべええええ!
これ、昨日の二の前じゃん!!
そう、寝坊とグダグダしていたせいで、ギターを取り返し損ねたのはつい昨日の話。
同じ失敗を繰り返すわけには行かない。
私はベッドから飛び起き、とは言えお腹が空いていたので、ご飯を食べに、またあのメニューのないレストランへ向かった。
私が彼のレストランへ入ると、彼は怒ったような口調でいきなりこう言った。
「おい、知ってるか?
昨日君の投稿を見たっていう中華系マレーシア人が来て、4RM(約105円)で料理してくれっていうんだよ。
知ってるか?
俺が毎日君にたった4RMで料理を食べさせてるのは、君がまだ若くて、旅人で、お金もないのを知ってるからなんだぞ。
そして、君が他の誰よりも美味しい美味しいって言いながら本当に美味しそうに食べてくれるからなんだ。
皆んなに4RMで食べされられるわけじゃない。
本当は一番安くしたって、8RMなんだ。
歴代の中で、4RMで誰かに食べさせてやったことはない。
けど、君には特別に毎日最安値の半額で食べさせてる。」
そう、私は、このお店の料理があまりに美味しいのにも関わらず、あまりに安いので、SNSに投稿したのだ。
それを見た、私のマレーシア人の友人が、これはどこのお店?と聞いてきたので、私はここを紹介したのだった。
私は、4RMで食べているのが私だけだったなんて、知らなかった。
おじちゃんは、一言もそんなこと言わなかったから。
誰に対しても同じ価格なのだと思っていた。
そうだったのか。おっちゃん。。。
そう思うと、なんだか涙がちょちょぎれる思いになる。
そんなおじさんが出してくれた、今日の料理は、ラムのレバー炒めと、オムレツだった。
正直いうと、私はホルモンが苦手。
だけど、おじちゃんの作るホルモン料理は、美味しかった。
私はこの日から、少しだけ値上げをして、5RM(125円)を払うことにした。
だって、他の人に比べたらあまりにも安すぎるから。
といっても、ほんの少しばかりのと値上げに過ぎないけどね。
さて、美味しくご飯をいただいた後は、速攻で空港へと向かう。
今日も昨日と同じように、時間切れになったら、本当に笑い事じゃない。
昨日と同じように空港行きのバスに乗り、空港まで来ると、今日は割とすんなりタクシーを拾うことができた。
値段は20RM(約500円)
やばい今の私にしたら超絶高額な出費、、、
まあしょうがない。
さて、空港からカーゴハブまでは、タクシーで20分だ。
私はタクシーの車窓から見える
青空と、刺すように眩しい日差し、並んだヤシの木のトロピカルな風景を見て、
私は東南アジアに半年もいたのか、
ということをしみじみと思った。
今やもはや、東南アジアに対して、異国という感じは全くしなくなった。
始めのうちは、結構異国感がしていたのだけどな。
住めば都というもので、マレーシアは、もうすっかり慣れた第二のホームだ。
観光という観光をしたのは、最初の数ヶ月のみだったが、それでもたくさんの思い出が詰まっている。
何より、ここでの出会い、一緒に生活した仲間のことを思った。
私はギターを2ヶ月間なくした。
ギターを失くした時、最初は、
これからどうしよう
と心配になったり、
お金のことを心配になったり、悲しくも悔しくもなったりしたが、
今では、ギターを2ヶ月間なくしたことは、意味のあることだったと思える。
なぜなら、そのおかげでここに長らく滞在し、そして出会えた友達がいるからだ。
不運にだって、必ず意味があるものだ。
最悪な出来事を、素晴らしい出来事に変えられるのか、悪夢のままで終わらせるのかは、その後の自分の行動と、自分の気持ち次第だと私は思う。
嫌なできごとがあったからこそ、余計に頑張ることもできるし、反省することも、学びに変えることも、それを次に活かすこともできる。
嫌な出来事自体を楽しむことだって、自分次第でできるのだ。
今からやっとギターを取りに行けること、
やっとインドに行けることは嬉しかったが、同時に、ここを出る日が近づいてきたことを少しだけ寂しくも思った。
タクシーでしばらく走り、大きなマレーシア郵便のマークを掲げた倉庫のような建物が見えてくると、私はドライバーに
「あれあれ!あれだよ!見えてきた!!」
と興奮気味に言った。
もちろん何も知らない彼は、困ったように笑うだけだったのだが。
その建物の門の前で、タクシーを降ろしてもらう。
そこはやたらとでかい倉庫のような建物の前だった。
ここに私のギターが。。。
私は、ドキドキする気持ちを抑えつつも、早歩きで、その建物の入口へと向かった。
なんだか敵のアジトに向かうようなドキドキする気分だ。
中に入ると見えてきたのは、まず、税関のカウンターだった。
どうやら私も、後でここでタックスを払わなければいけないらしい。
荷物の受け取りカウンターは、ここの少し奥。
そこでいよいよギターと再会できる。。。!
受付の人に、
「ミホウチダです。ギターをタイからマレーシアに送ったんですけど、受け取れますか?追跡番号は〇〇です。」
と言うと、身分証を見せるように言われる。
パスポートの写真を見せ、ベンチに座って、スタッフが私のギターを取ってきてくれるのを待った。
やっとやっとやっと、ギターを取り戻せる!!!!
ギターを待っている間、ベンチで隣に座っていた男性に、
「君は日本人?」
と話しかけられた。
どうやら彼も、荷物が出てくるのを待っているようだ。
「僕、少しだけ日本語が話せるんだ」
という彼。
そんな彼と少しお話をしていると、私の名前が呼ばれる。
左側の小さな窓から出てきたのは、確かに私が送った、ギターを入れた大きな段ボールだった。
おーーーーーーー!!!!
私のギターーーーーーー!!!!!
とにかく早く中身を開けたい気持ちでいっぱいだった。
さっきのカウンターでタックスを払って、早くホステルに帰ろう!!!
と思ったのだが、ここで、さっきの男性も、私と同じようにカウンターでタックスを払っているのが目に入った。
私はそこであることを思いつき、駄目元で彼に話しかけてみた。
「すみませんん!車でここまできました?空港近くを通ったりしません?
私、クアラルンプール市内から来たんですけど、空港から市内までバスが出てるので、一回空港に行きたくて。
もしよかったら空港まで送ってもらえませんか?」
私がそう言うと、彼は、
「君、空港に行かなきゃいけないの?
そうじゃないなら、市内まで送ってくよ!
君のホステルまで送っていくよ。僕もクアラルンプールの中心地から来たし。」
と、あっさりオーケをもらえた。
しかも空港まででなく、まさかのホステルまでの送迎だ。
超ラッキー!
そしてこの長い帰り道を、誰かとお話ししながら帰ることができるという。。。
本当にありがとう!!
私は、彼の手続きが終わるのを待ち、彼の車に乗って、ホステルまで送って行ってもらった。
彼、日本が大好きで、つい3日前まで大阪を旅行していたんだって!
日本は4回くらい旅行したことがあるらしい。
私は無事、彼にホステルまで送ってもらったあと、
部屋から日本茶の詰め合わせの缶を持ってきて、彼に渡した。
日本から、もし誰かにお世話になったりした時は、この日本茶のティーバッグの詰め合わせをあげよう!
と決めていた詰め合わせだ。
缶も赤富士でいいでしょ?
中身が壊れていないか心配だったけど、ダンボールを開けると、ギターは全然ご無事でした!
ギターをなくしたせいで、私がこのホステルに2ヶ月も滞在していることを、ここの滞在者たちはみんな知っていた。
だから、私がギターをやっと取り戻せたことを、みんな喜んでくれた。
私はいつものように、ヒンドゥー教のお寺に、無料のご飯をもらいにいく。
さて、これを食べて、ひっさしぶりの路上弾き語りにさっそく出かけるぞ!!!
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