人生初路上ライブで得たもの
約1時間半の葛藤の末、ようやくギターを手に取り立ち上がり、
通り過ぎていく人並みに向かって大きな声で歌い始めた私は、急に背中を押されて、意図せず一人ステージ上に放り出されてしまった時のように、足がきちんと地面についていないような、宙に3センチくらい浮いているような気持ちがした。
足にあまり力が入らなかったからだ。
が、一度歌い始めたからには後戻りはできない。
一度ギターをかき鳴らし始めたからには、最後まで責任を持って歌い切るしかなかった。
一度ステージに上がったら、何があっても、出番が終わるまでは演じきらなくてはいけないのと同じだ。
そんな風に、不安をかき消すように自分を奮い立たせていた。
実際には、誰も私を見ていないのだが。笑
とにかく、精一杯の笑顔で、そして精一杯にこのドキドキを楽しみながら、この声よ届け届けと歌い続ける。
誰も立ち止まってくれない寂しさもありつつも、とにかく無我夢中だった。
すると、歌い始めてから数分で、ギターケースも置いていなかった私の目の前に、100台湾ドル札を置いてくれた人が現れた。
私はびっくりした。
こんなに早く、誰かの足を引き止めることができるなんて思ってなかったから。
それに、チップまで渡してくれるなんて。
私は大きな声で、その人の背中に日本語で
「ありがとう!」
と言い、俄然自信の湧いてきた私は、ギターケースを開いて自分の目の前に置いた。
あんなにビビっていた私は、もうどこかにいっていた。
それからは、次から次へと、足を止めてくれる人が現れた。
通りすがりにチップを入れて去っていく人、立ち止まって歌をじっくり聞いてくれる人、「日本が好きです!」と日本語で話しかけてくれる人もいれば、頑張ってねと応援してくれる人、次はどこにいくの?と興味を持ってくれる人、日本人の人たちまで。
誰かがリアクションしてくれる度に、私は胸が熱くなり、「ありがとう!謝謝!!。ありがとう!」
と何度も言った。
中には、
「寒いでしょう。ちょっと待ってて!」
と私に声をかけてどこかへ行ってしまい、
かと思えばモスバーガーのコーンスープと、ライスバーガーを買って来てくれたおじさんまでいた。
歌い始める前まで、あんなに不安だったのに。
白い目で見られるかもしれないって、思っていたのに。
こんなに温かく接してもらえるなんて、思ってもみなかった。
こんなに人ってあったかいのに、不安がっていたのが本当に不思議なくらい。
嬉しくて嬉しくて、誰かが立ち止まってくれる度に、一緒に写真を撮った。
1時間くらい、私の歌を聴き続けてくれた車椅子のお兄さん。
こんな小さい女の子に、
タピオカミルクティを買って来てくれたおじさん。
一度どこかに行ったかと思ったら、隣の文具屋さんで可愛いメモ帳を買ってプレゼントしてくれた女の子。
きっと、私も何か気持ちを伝えたいな!ってそんな風に思ってわざわざ買って来てくれたんだろうな。
途中雨が降って来たりもしたが、それでもたくさんの人が傘をさしながら歌を聞いてくれ、約3時間で最終的に、これだけのお気持ちをいただいた。
喉が枯れるといけないからと、龍角散をくれた日本人の旅人の男の子や、寒いから手を温めて!と、カイロをくれた人もいた。
台湾の人たちの温かさ、人の温かさ、思いやりを感じすぎて、気持ちの高鳴りが、しばらく抑えられなかった。
重い荷物を抱えて宿に帰った後は、貰ったものをいただいた。
コーンスープも、ライスバーガーも、もう冷めてしまっていたけれど、それでもとても美味しかったし、ありがたみと優しさと嬉しさを噛み締めながら食べると、やっぱり気持ちが温かくなる。
この日、初めて路上ライブをした私は、人の優しさを身に染みて感じた。
「頑張って!」
と見ず知らずの人である私に、応援したいと思う気持ちを持ってくれる人がこんなにたくさんいるのだ。人って本当に素敵だと思った。
旅をしていると、こうやって声をかけてくれる人に出会うことがたくさんある。
自分のやっていることに対して
「素敵ですね!頑張ってください」
と応援してくれるのは、素直にとても嬉しいし、何より、誰かに対してそういう気持ちを持つ人がたくさんいるこの世界って本当に素敵だなって思う。
(ちょっと感情的すぎるかもだけど笑)
でも、本当にそう思った。
旅をしていると、そういう、今まで気づかなかったことに気づく機会がたくさんある。
そして、改めて、「怖くてもまずやってみる」
ってすごく大切だと思った。
何事も、最初は不安がつきもの。
けれど、やってみたら、自分の想像していたより全然良い結果が待っていたりする。
もちろん、想像通りの悪い結果のこともあるかもしれないけれど。
頭で想像しているだけじゃ、わからないことってたくさんある。
まずはやってみなくちゃ。
そうして初めてわかることってたくさんあるから。
良い結果だったら、万々歳。
もちろん、たまには失敗もあるけれど、それも良い思い出に、そして良い学びに変えられるよう、失敗を糧にして次努力すれば良いだけだ。
何もしなくちゃ、反省も喜びも生まれない。
この日路上ライブをする前の私がそうだったように。
不安と恐怖に負けて、歌わずにギターを持ってさっさと退散していたら、今日の素敵な出来事はなかったはずだ。
とにかく、やってみることが大事!
最後に、台湾の皆さん、素敵な時間をありがとう!
人生初の路上ライブ、おかげでとても素敵な思い出になりました。
そして、人の優しさに気づかせてくれてありがとう。
皆さんのおかげで、今後の路上ライブも、自信を持って続けられそうです!
本当にありがとう!
読んでくれてありがとうございます!よかったら
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元気そうでなによりだ。路上ライブは路上の街頭演説に似ているかもしれないな。おじちゃんは誰も聞いていないところで演説をすることが多いけど…。しかし、そこは外国、しかもひとり旅。大した度胸だ!今、東松山は桜が満開で美しい。それでは一日一日を楽しいんで、風邪をひかないように気をつけるんだぞ (^^♪
はじめまして。
いつかエベレスト街道に行きたくて
アンナプルナの記事からずっと楽しみに読んでおりました。
このところこちらのブログにはご無沙汰だったのですが、今日久しぶりにお邪魔して、この記事を読んで胸がいっぱいになってしまいました。
たくさんのお写真の皆さんの顔!
どの方もすっごくいい笑顔!!
それがすべて物語っていますね。
見ず知らずの人同士が美穂さんのギターと歌を通じて共鳴し合って出会い、それぞれの人生の記憶の中に何かを残すってすごいことですね。
最近慌ただしい毎日の中で自分の夢を忘れかけていましたが、私も頑張ろ!と思えました。
ありがとうございます。
これからも素敵な人生を。
くれぐれもお体ご自愛下さいね。