ラマダンにつき、断食にトライ – 旅するシンガーソングライター|内田美穂
旅するシンガーソングライター

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マレーシア

ラマダンにつき、断食にトライ

「ブー、ブー、ブー」

電話のバイブレーションが鳴ったのは、朝5時過ぎ。

 

イラク人のムスタファからだ。

 

私は彼に昨日

「明日朝5時に起こして」

と頼んでおいたのだった。

 

 

 

 

 

昨日の夜、

私とムスタファはロビーのソファで話をしていた。

 

ひょんなことからイスラム教の話になり、私は、

 

「私もラマダンの断食に挑戦してみたい」

 

とその時彼に言ったのだ。

 

 

 

ここに滞在している人たちの半数がイスラム教徒。

 

マレーシアがイスラム教が国教の国だと言うこともあり、ムスリム達にとって旅行しやすいこともあるだろう。

 

 

そんな友人達が、みんなして昨日、一斉に断食を始め、

朝から夕方まで何も飲み食いしないのをみていた私。

 

興味を持たずにはいられなかった。

 

それに、旅に出てから、50人以上、ムスリムたちと友人や知人になってきたのではないだろうか。

 

そして彼らに、

家族のように接してもらったり、

ご家庭に長期間滞在させてもらったり、

ホステルで可愛がってもらったり、

 

何度も親切にしてもらってきた。

 

そんな彼らのことを、

自分もイスラム教を体験することで、

少しでも理解したいと思ってね。

 

 

メディアの影響などで、

イスラム教に対してあまりいいイメージを持たない人が多い。

 

これは、日本だけでなく、

世界共通の事実だ。

 

もちろん、宗教など関係ないと思う人もいるし、

私も、宗教や肌の色などより、人としての資質や心で人を判断することが大切だと思う。

 

けれど、イスラム教徒の彼らが、

ただ彼らがイスラム教徒であるがために、

 

世界の至る所で、あまりよくない目を向けられたり、

差別されたりすることは、よくある話だ。

 

 

私は、何人ものイスラム教徒たちと出会い、時々とっても深い関係になったりしてきたけれど、

彼らはイスラム教徒としての生きづらさを語ってくれることが多々あったし、

世界的に良い印象を持たれていないことを、彼ら自身も認識していた。

 

そして、口を揃えて、

 

「しょうがないことだよ。

僕らにはどうしようもできないことだ」

 

と、悲しそうに事実を受け入れ、

半ば諦めたように言うのだった。

 

 

実際は、彼らと話すうちに気が付いたことは、

やっぱり人は、どの宗教を信仰しているかでは、

判断できないと言うことだ。

 

 

人は人、

皆違っている。

 

宗教で一括りにして、

個人を判断することはできない。

 

 

テロを起こしたり、

ひどいことをする人も中にはいるけれど、

本来、一般的なムスリムは、私たちと何ら変わらない、

道徳心や優しさを持った普通の人間だ。

 

私は、そんなムスリムたちに、本当にたくさん出会ってきたし、

何度も親切にされてきた。

 

 

それに、親友と呼べるほどの友達だって、

イスラム教徒だったりする。

 

 

 

 

 

 

私が、ラマダンに挑戦したいと言うと、ムスタファは大喜び。

 

 

「明日、夜明け前の朝ごはんを食べよう!

 

僕が電話で起こすから心配するな」

 

 

そう言ってくれたのだった。

 

 

 

 

そんなこんなで、朝5時過ぎ、私はロビーへと向かった。

 

ロビーには、ムスタファの他に、ムスリム達が3、4人、朝食をとっていた。

 

 

ラマダン期間中は、もし朝食をとるとしたら、夜明け前に食べなくてはいけない。

 

むしろラマダン中は、朝食を食べない人も多い。

 

 

 

ムスタファは、私を見つけると、

 

「おー!ミホ!起きれたか!

僕は君がイスラム教に興味を持ってくれてとっても嬉しいよ!

アッラーも喜んでくれてるさ。

僕がアラブ風の朝食を今日は出すから、これを食べて」

 

と言って、クリームチーズと、ナンのようなパンを出してくれた。

シンプルだけど美味しい。

 

 

私たちは、朝食を食べ終わると、また「おやすみ」を言って、二度寝するのだった。

 

 

 

 

 

 

ラマダンの断食初日、私は空腹に悶え苦しんだ。

 

断食に挑戦する前は、

 

「いや余裕っしょ!だって、私、今お金ないから、もともと1日2食しか食べてないし!」

と思っていた。

 

 

それに、ムスリム達が、あまり辛そうな顔をしていないし、

お腹すいたとも一言も言わないから、

てっきり余裕なのかと思っていた。

 

けどそれは間違いだった。

 

 

 

午前中は、辛うじてまだ平気だったのが、

お昼を過ぎる頃になると、空腹がやばいのなんの。

 

そして次に、だんだん頭が回らなくなってくる。

思考回路が停止するのだ。

 

きっと、空腹時に起こるこの感覚は、

一日何も食べずに過ごしたことがある人ならわかるかもしれない。

 

これが、1ヶ月も続くなんて、、、、

 

 

ムスリム達が余裕そうな顔をしているのは、

子供の時から毎年やっていることだから、慣れていると言うこともあるらしい。

 

が、本当は、やっぱり彼らも辛いらしかった。

 

 

まあ初めてのことじゃないから、顔には出さないのだろう。

 

 

いつものように、ムーンやインドネシア人のリアが、

私に朝食やお昼を分けてくれようとする。

 

「ミホ!パンがあるから一緒に食べよ!」

 

でもそこで、私は

「ノー」と言う。

 

断食に挑戦してるから!

 

と。

 

 

すると彼女らは、心底心配そうに、

「あんたただでさえ細いんだから、やめなさい!!食べなさい!」

ともはやお叱りの勢いで注意された。

 

 

だが、一度始めたからにはやめたくない私。

 

そんな彼らの反対を押し切って、断食にトライする。

 

 

 

私は、なぜ、ムスリムたちは、1ヶ月間、断食をするのだろう?

 

と疑問に思い、

 

数人のムスリムたちに、その理由を聞いてみた。

 

すると

 

 

デトックス効果があって、健康にいいから。

 

貧しい人たちの気持ちを知ることで、自分が今恵まれていることに感謝できる(イコール恵んでくれているアッラーに感謝できる)

 

などの答えが返ってきた。

 

イスラム教の友人達10人くらいに聞いたけれど、だいたいみんな、これと同じことを言うのだった。

 

 

 

 

空腹は、夕方ごろになると、だんだんマシになってきた。

 

頭は相変わらずあまり回らないが、

慣れなのか何なのか、空腹を感じないで済むようになってくる。

 

 

やっと19時を過ぎた時、サイードが

 

「ミホ!!僕らモスクに行くから、一緒に行くぞ!!」

と私を誘ってくれた。

 

 

が、昨日、私はムスリムではないことを理由に、

この時間のモスク入場はお断りされたばかりだ。

 

 

それをサイードに説明すると

 

「大丈夫!僕らと一緒にいけば大丈夫!

それに、モスクにイスラム教以外は入れないなんてことないさ!!

無理ならその時諦めればいい。まずはトライ!!」

 

と、それでも私をモスクに連れ出してくれた。

言ってることが、やっぱりサイードらしい。

 

 

私は、イエメン人のオマールと、サイード、そしてバダールと一緒に、マスジット・ジャメに向かう。

 

昨日の再チャレンジだ!

 

モスクの入り口に着き、入れるかどうかドキドキしながら門をくぐろうとすると、

意外とすんなり中に入ることができた。

 

私は入り口を入ってすぐの場所で、ヒジャブを借りた。

 

 

モスクの中では、女性と男性は一緒に過ごすことができない。

 

私と、サイード達は、二手に分かれ、

私は一人で、女性が礼拝するモスク場所へと向かった。

 

すでにたくさんの人がいて、みんなフリーフードを待っていた。

すると、私は、その人混みの中に、見覚えのある顔を発見!

 

同じホステルに泊まっている、ウィンディだった!

私はウィンディの元に駆け寄っていった。

 

ウィンディは超絶熱心なムスリム。

毎朝5時半頃に起きて、真っ暗な部屋の中、一人でお祈りをしているところを何度も見てきた。

 

 

イスラム教の教えでは、

基本的に1日5回、メッカのある方角を向いて、礼拝をすることになっている。

 

 

と言っても、なかなか1日5回、きちんとお祈りをする人ばかりではない。

特に若い人なんかは、1週間に一回しか礼拝をしない人もいる。

 

 

毎日きちんと5回礼拝している若い子は、かなり珍しいんじゃないか。

 

 

彼女とおしゃべりをしていると、断食明けの食事、イフタールが配られる。

私はもう、早く食べたくて食べたくて、待ち遠しくて仕方がなかった。

 

 

7時20分頃、礼拝の呼びかけ、アザーンが大きな音で流れ始めると、

私たちは一斉に食事の前のお祈りの言葉を唱え始める。

 

 

私も、食事の前のお祈りの言葉だけは覚えているので、

手を合わせ、

「ビスミッラーヒル ラハマーニル ラヒーム アラフマバ リクラナ フィーマ ロザタナ ワキナ アザバナ アーメン」

とみんなと一緒に唱えてから食事を始めた。

 

その光景が、いつも面白いなと思う。

 

何だか、給食の前に

「いただきます」

をしてから、一斉に食べ始める生徒みたい。

 

 

それが、世界中どこでも、共通のお祈りの言葉を唱えて行われるのだから。

 

 

お腹がペコペコペコペコなこともあって、

その分、夕食はめっちゃ美味しく感じた。

 

食べるってこんなに幸せなのか〜食べ物うっまー!!! って。

 

それと子供の頃クタクタでお腹ぺこぺこになるまで遊んでから家に帰ったら、

家の美味しいご飯が待ってるあの感覚を、なぜか思い出した笑

 

 

 

食事の後は、モスクでみんながお祈りをし始める。

   

立ったり、座ったり、頭を床につけたりといた動作を繰り返し、礼拝をする人たち。

 

もう何度もこの光景を見てきたが、

モスクで、礼拝の時間にお祈りを見るのは、この時が初めてだった。

 

 

もし、一人だったら経験できなかったことだ。

ムスリムの友達がいるからこそ、経験できたことである。

 

 

 

 

 

ホステルに帰ると、ムーンが私を待ち構えていたかのように、

「ミホ!!スープを作ったの!!ミホに食べさせたくってね。

でもね、失敗しちゃったの。だけどせっかくだから食べて!」

と言う。

 

今日もムーンはムーンらしく、とてもお世話焼きさんだ。

 

 

さっきご飯を食べたばかりだけど、せっかくなのでいただくことに。

 

 

すでにダイニングには5,6人が鍋を囲んで、ムーンの作ったスープを楽しんでいた。

 

 

だが、私が器にスープを装っていると、みんなが声を揃えて、

「このスープ、さっきまで、大失敗で大変だったんだよ!」

と言う。

 

65歳で世界一周中の日本人、夏子さんは、日本語で私にこう言った。

 

「この子さ、スープを作るって言って、人参とかジャガイモとか、こーんな大きく切り出してさ。

 

それじゃ煮えないよって言ってるのに、全く言うこと聞かないの。

 

しかもそれを鍋に入れて、水をこーんな大きい鍋の縁まで、溢れるほど入れ出してさ。

 

全く煮えないのよ。何度もそれじゃ無理って言ってるのに、

ノーノー!大丈夫!

って言って聞かないんだから。

 

しかも、彼女が使った調味料は塩だけ。それじゃスープじゃないっての笑

 

全く頑固な子だよねえ笑」

 

いやほんと、全く、ここでムーンの頑固さがよく表れている笑。

 

 

ちなみに夏子さんは、超料理が上手。

何度か彼女の作った料理を食べさせてもらったが、主婦歴うん十年とあって流石の美味しさだった。

 

 

ムーンの作ったスープに、わかめスープの元や、味噌、醤油をいれ、味を整えたのも夏子さんだと言う。

 

 

優しい味の、美味しいスープだった。

何より、約半年海外にいる私にとって、

日本人の夏子さんが作った和食のようなスープの懐かしい味は

とっても沁みるのだった。

 

05/10

 

次の記事:ラマダン、フードバザール!!

前の記事:マスジット・ジャメにイフタールをもらいに行くも、、、

 

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この記事を書いた人

旅するシンガーソングライター

1994年生まれ/埼玉県出身。 高校生の頃から、ラジオやライブハウスに出演し、シンガーソングライターとして活動。 ​早稲田大学を卒業後、一年のギャップイヤーを経て、2018年4月に広告会社に入社するも、世界一周を決行するべく退職。 現在は、ギター弾き語りで旅費を稼ぎながら、世界一周中!エベレスト等ヒマラヤを二度登山したりと「やらない後悔よりやった後悔」がモットーの旅人。 もっと見る

  uchidamiho2929@gmail.com

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