お別れの前日 - 旅するシンガーソングライター|内田美穂旅するシンガーソングライター|内田美穂
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マレーシア

お別れの前日

「Miho! Let’s go!」

と、サイードはいつものように私を誘うと、外へと歩き出す。

 

 

 

マレーシアの暑い気候の中でも、少しだけ涼しくなった夜に、

ぶらぶら街を歩いてただ話をするのが、私たちのお気に入りだった。

 

 

でも、まずは街を歩く前に腹ごしらえ。

 

 

私たちは、サイードのお気に入りのファストフード店、テキサスチキンへ向かう。

 

 

 

ガラスの扉を押して、中に入った瞬間、冷房でキンキンに冷えた空気が私たちを包む。

 

「涼しいいい。

 

むしろ寒いいいい。」

 

 

 

これでこそ東南アジアだ。

 

マレーシアでもシンガポールでもタイでもどこでも、

東南アジアのこういうお店は、どこも冷房がキンキンだ。

 

 

タイに5年住んでいる日本人から聞いた話だと、

冷房が効いているほど、高級でレベルが高い、というイメージさえあるのだとか。

 

 

 

とりあえず、私たちは、レジでチキンを注文する。

私はコーラと、からーいソースのかかったチキンを注文。

 

ちなみに、ギターをなくしてお金がないことを知っているサイードは、

今回は僕が出す!

 

と言って、聞かない。

 

私が

 

「こないだもそう言ってシャワルマ奢ってくれたじゃん。私が払うよ」

と言うのだが、

 

「じゃあ次回ね」

と言って、結局さっと奢ってくれるのだった。

 

 

 

ちなみにこのチキンの辛さ、まじでハンパないからね。

 

 

タイやマレーシアの

「あんまり辛くないよ」

は、日本人にとっての激辛レベル。

 

 

彼らにとっての「辛い」は、

もはや「痛すぎて涙が出る」レベルなのだ。

 

 

マレーシアでは、よく普通のご家庭なんかに泊まらせてもらっていたりしたのだけど、

たった2人前の野菜炒めを作るのに、

 

4本、5本、6本、、、、、と

平気で大量の唐辛子を入れるからね。

 

そこに、更に、激辛のチリソースも加えるのが普通なのだ。

 

 

おかげで最初マレーシアに来た時は、

2、3週間ずっと下痢をしていた。

 

 

タイでもマレーシアでも、串に刺さったソーセージなんかを食べたりすると、

生の唐辛子がそのままついてきたりする。

 

それをソーセージと交互にかじって食べたりするのだ。

 

 

まじで、もう辛いなんてもんじゃない。

 

 

そんな東南アジアに半年いて、普通に現地のご家庭のご飯を食べてきた私は、

だいぶ辛さには慣れてきたところだけど、それでもこのチキンはヒーハーしながら食べた。

 

 

そんな私を見て、サイードは笑っていた。

 

 

 

「そういう変な顔しながら食べたり、気取ってないとこが君のいいところ」

 

と相変わらずいちいち褒めてくれる。

 

 

 

別に、変な意味じゃない。

 

褒められても、べた褒めされてる感も全くしないし、嫌な気が全くしないのがサイード。

 

 

それは彼が、とっても素直で、嘘が嫌いで、偽りがなくて、人のいいところ見つけるのが得意で、ただ思ったことを伝えたい性格だからだろう。

 

 

時々、というか割と頻繁に、

特に男性だと、まあ色々なことが目的で、女性を褒めたりする人がいる。

 

 

そしてボディタッチも加わり、挙げ句の果てに、堂々と「僕とホテルに泊まればお金を出すよ」なんて言い出す人だって、

旅をしているとたくさん出会う。

 

 

 

けれど、サイードのそれは、彼らのそれとは明らかに違う。

 

 

男性の側は気がついてないんだろうな〜って思うけど、

案外そういうのって、女性にはバレバレなんだよね。

 

 

バレているからと言って、女性はわざわざ怪訝な顔をしたり、態度に出したりはしないものかもしれない。

でも、そういうのってバレている。

 

そして、女性たちの間で、

「彼には気をつけた方がいいよ」

なんて、影でマークされるのがオチだ。

 

 

 

 

私たちは、チキンを食べながら、サイードの卒論の話だとか、

まあとにかくいつも通り、いろんなことを話し合った。

 

サイードと話していると、私もなんでもかんでも素直に話せる。

 

 

そしてサイードも、

「ミホはコミュニケーションが得意。

それはいつでも相手の話に耳を傾け、それをきちんと自分の中に落とし込もうとしてくれるから。

それで、反対だと思ったら自分の意見をちゃんと言うし、賛成する時はちゃんと賛成する。

腰が低いから、人の話を聞いて、そこからなんでも学ぶんだ。だから君はとっても頭が良い」

 

と褒めてくれるだ。

 

私は、これを言われた時、彼に言われたことを今でもはっきり思い出せるほど、素直にとても嬉しかった。

 

 

彼は、話の途中、よく、

卒論をやらなきゃ

と言う話を持ち出すのだったが、

 

「しなくちゃって言ってるうちは、捗らないよ。

卒論を書くことで何か学べることがあるはずだし、それを楽しんでみたら?

まずは、しなくちゃ、って言うのをやめて、卒論書こう!

とか、卒論書きたいからやろう!

とかって言うようにしたら?」

 

と私は言ってみた。

 

 

すると彼は、

「いいね!!それ!!」

と言う。

 

私たちは、その場のノリで思わずハイタッチをした。

 

 

彼と話していると、自分たちでも気づかないうちにあまりに会話が盛り上がるので、

時々、ハッと我に帰り、

 

 

「しーっ!

僕らちょっとうるさいかも。」

 

 

とお互い注意し合うのだった。

 

 

 

彼は、

私に「君は完璧なパッケージ(perfect package)」と言ったことがあった。

 

「音楽ができて、絵が上手くて、一人で旅をしていて、

ブログを書いて稼いでいて、頭が良くて、顔は、、、、

うーーん、まあちょーっとだけ可愛い。

そうだ、君は完璧なパッケージみたいだ。」

 

と。

 

 

私はその時、

 

「ちょっとだけ?めっちゃ可愛いの間違いでしょ。」

 

と、冗談で返したのを覚えている。

 

 

(自分でこんな、完璧なパッケージとか書いてすみません笑。

こんなことを言ってくれるのは、

サイードが人のことを本来の100倍くらいにして褒めるのが上手なせいです。)

 

 

実は、この1ヶ月ほど前に、全く同じこと(完璧なパッケージと言う言葉)を、

他の人に言われたばかりだったので、

私は彼から同じ言葉を聞いた時、驚いてしまった。

 

 

何に驚いたのかと言うと、全く嫌な感じがしなかったから。

 

 

私、以前、この言葉を他の人から言われた時、

なんだかあまりいい気がしなかったの。

 

 

「完璧なパッケージ」なんて、なんだか人じゃないみたい。

 

それに、人間に、良いとか悪いとか、完璧だとか、そんなものないって。

 

 

でもサイードに言われると、それが全く違う聞こえ方をするのだから不思議だ。

 

 

 

 

明日、彼は、このホステルをチェックアウトする。

 

こうやって、いつまでも時間を気にせず語り合えるのも、もしかしたら今日が最後かもしれない。

 

 

 

 

 

 

 

私たちは、ぷらぷら街を歩いた後、一旦ホステルに戻った。

 

ホステルに戻ると、サイードは、

自分の部屋から一冊の本を持ってきて、私に渡す。

 

 

 

「これが、こないだ話していた、本。

僕がチェックアウトする前、君に本をあげるって約束したでしょ。

中にメッセージが書いてあるんだ。」

 

 

私は、まだ中を見ず、

ありがとう

と言ってそれを受け取った。 

 

 

何時間も外で話してきたばかりなのに、

それでも話し足りなかった私たちは、

ホステルの目の前の道端をただ行ったり来たりしながらまた話を始めた。

 

 

 

話題は普段どんな本を読むのかって言う話になる。

 

「私、どんなジャンルの本も好き!本が好きだから、冗談じゃなく、私の部屋には1000冊くらい本がある。本だらけで部屋がやばいことになってるよ!笑笑

 

小説もファンタジーも、語学の本も、新書も、伝記も、文学作品も、全部好き!ミステリーとかはあんまり読まないけど。

 

でも、”成功するにはこうしなさい”みたいに、何だか1つの正解を提示してくるような本が、どうしても好きじゃない。

 

だって、人のアドバイスや本から知識を得ることは大事だけど、でも、何を信じるか、何を答えとするかは、自分次第だから。

 

人によって経験も価値観も違うのに、

”こうするのがいい”なんて万人にとっての正解のように提示してくる本は、私は嫌。

 

最近、そう言う本が多い気がするけどね!

 

そして、そう言う本を読んで、”これこそが正解なんだ”って自分でよく考えずにただ従う人たちはもっといや。

 

だって、自分の経験とかそう言うことから学ぶことの方がよっぽど大切だと思うし、大事なのは、自分がどうしたいかって言うことだと思うから。

 

人のコンパスに従うより、自分だけのコンパスを大切にすることの方が、よっぽど幸せの近道だと思う。

 

そう、そもそも私、成功するより、幸せになりたいんだよね。

 

本読んで書いてあることに従うのが大事な時もあるけど、私は、身の回りに、もっともっとたくさんのことを学べる機会ってたくさんあると思う。

 

友達と話すこと、旅をすること、全ての行動、全ての経験が学びだし、それを積み重ねていくことで、自分だけの自分にぴったりのヒント集になると思う。

 

世の中にはもっと、刺激的で自分をアップデートしてくれる経験があると思う。

 

それに、成功ばっかり追い求めていると、本当に大切なことを見失ってしまう気がするし。

成功を追い求めると、他人と比べることに夢中になって、人に負けることを恐れるようになると思うし。

 

成功したかったらこうしなさいみたいな答えを最初から突きつけてくるような本を読むなら、もっと違う種類の本を読んで、自分なりに自分の答えを見つけたいと思う!

 

でも本は基本なんでも好きだよ。」

 

というようなことを、サイードと話し合った気がする。

 

 

 

 

 

一番大事なのは、経験から学ぶことって。

 

 

もちろん、いろんな考えの人がいて、こう思う人たちばっかりじゃないのはわかってる。

どう思うかは人の自由だ。

 

 

あくまで

”私たちの場合”は、

本よりも経験から学びたいタイプだし、感覚を大事にしたいタイプなのだ。

 

だからこそ、こういうところで意気投合する。

 

みんなが共感してくれるかどうかはわからない。

でもそれでいい。

 

だって、みんなにとって正解は違うから笑

 

”私にとっては”それが正解なのだ。

 

そして私とサイードは、正解だと信じるものが似ているからこそ、

こういう場所で意気投合する。

 

 

私たちは、いつの間にか、そのまま道端に腰掛けて、話混んでいた。

 

 

「僕たち、絶対に、また、いつか地球のどこかで会おうね。

約束だ。Keep in touch! OK?

そしていつか僕らが再開するとき、この本を持ってきて。

そしてその時は、君も、何か本にメッセージを書いて僕に一冊渡して欲しい」

 

とサイードは言う。

 

 

私は、いいアイデアだね!

と笑顔で頷いた。

 

これで、また必ずどこかで会える理由の約束ができた。

 

 

そんな話をしていると、彼は、ハッと思い出したように言った。

 

「さっきあげた本かして。」

 

そう言ったサイードに、さっき彼からもらった本を渡すと、何やらマジックで文字を書き足す。

 

 

彼が書いた文字はこうだった。

「いつか僕が誰かと結婚したら、未来の奥さんと一緒に、君に会いにいく」

 

 

私たちは、笑顔で

「絶対にね!」

と言ってハイタッチした。

 

 

そうして私たちは、あくびが止まらなくなる午前3時まで、道端に腰掛けて語り合ったのだった。

 

 

6/5

 

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この記事を書いた人

旅するシンガーソングライター

1994年生まれ/埼玉県出身。 高校生の頃から、ラジオやライブハウスに出演し、シンガーソングライターとして活動。 ​早稲田大学を卒業後、一年のギャップイヤーを経て、2018年4月に広告会社に入社するも、世界一周を決行するべく退職。 現在は、ギター弾き語りで旅費を稼ぎながら、世界一周中!エベレスト等ヒマラヤを二度登山したりと「やらない後悔よりやった後悔」がモットーの旅人。 もっと見る

  uchidamiho2929@gmail.com

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