インドの洗礼。たらいまわし
明日のデリー行きの長距離列車のチケットを買うため、
マンドゥワディ駅に向かおうと、ホステルを出た私。
バイクや車、牛、人がせわしなく行き交う、砂埃の舞った交差点に突っ立っていると、
「リキシャ―、乗ってけ、どこいくんだ?」
と、すぐにリキシャが止まった。
そりゃそうだろう。
彼らからすれば、外国人観光客は、絶好の顧客だ。
地元の人の何倍も高く運賃をとれる。
「マンドゥワディ駅まで」
「マンドゥワディ駅か、あそこは遠いから、400ルピー(400円程度)だ」
出た。
”あそこは遠いから”
戦法。
“あそこは遠いから高くつく”
は、実はインドのリキシャ―の決まり文句。
そう言って、かなり高めに運賃を要求するのだ。
「400ルピー?んなわけあるか!50ルピーまでしか出さないよ」
「よく言うねえ。50ルピーなんかで行けるわけない。どのリキシャに言っても同じことさ。その値段であの駅まで送ってくれるドライバーはいねえぜ」
ちなみに、ここれもまた決まり文句。
「いいよ、400ルピーもするわけないから。あっちのリキシャ―頼むからいいよ!」
そう言って、その場を立ち去ろうとする私。
すると待て待てという風に、
「200ルピーにしてやる」
というオッチャン。
まだまだ高い。
そのおじさんを背中で無視し、通りかかった別のリキシャに
「50ルピーでマンドゥワディ駅まで」
と声をかえた。
やさしそうなおじさんだった。
彼は、それ以上高い値段を要求することもなく、すんなりオッケーしてくれた。
交渉成立だ。
そうして、砂埃が舞い、常にクラクションの鳴り響く、ガタガタ道を、しばらく行くと、マンドゥワディ駅に到着した。
ネットで得た情報によると、どうやら、デリー行きのチケットはここで買えるらしかった。
駅に着いた途端、駅の前に座っている大勢のインド人たちが目に入る。
まーじでインド人、どこでもかしこでも、すぐ座るし、すぐ寝そべる笑笑
さすがやもう。
とりあえず駅の中に入ると、この長蛇の列。。。
チケットを買うために、みんなお行儀よく並んでいる。
ん???
待てよ。。。
ここはインド。
人がちゃんと並んだりしないことで有名なあのインド。
横入りで有名なあのインド。
だが、私の目の前に広がっていた光景は、インド人たちが、きちんと列を作り、順番を抜かしたりなどせずに、きちんと並んでいる様子だった。
(まあ、鉄の柵があるから、並ばない方が難しいけど)
メディアの影響で、完全に
「インド人は並ばない。
ゆえにマナーなど忘れて、己も横入り争奪合戦に参加せねばならぬ」
と、意気込んでいた私にとっては、拍子抜けする光景だった。
まあ、
だからこそ旅は面白い。
誰かの見てきた世界
と、
メディアを通して伝えられた誰かが見てきた世界
と、
私の目に映る世界
はすべて違っている。
どこに行って、何を見るか。
そのほんの少しのタイミングや場所のずれが、見える世界を大きく左右するし、
例え全く同じものを見たとしても、その見え方はその人が生きてきた背景や価値観によって全く違うものとなる。
さて、明日のデリー行きのチケットを買いに来た私。
この窓口で合っているのだろうか。
この長蛇の列にきちんと並んで、違ってたらやだな。。。。
そう思って、並んでいるおじさんに、
「デリー行きのチケットはここ?」
と聞いてみた。
するとすぐ隣の、誰も並んでいない窓口を指さす彼。
彼の言うとおり、とりあえず私は、その列には並ばず、空いている窓口に行ってみた。
「明日のデリー行きのチケットが買いたいんだけど。」
すると帰ってきた答えはこう。
「ここはジェネラル席の当日チケットを買うブース」
あー。出た。ジェネラル席か。
ジェネラル席とは、当日販売のチケットのことで、このチケットでは、座席の予約は不可。
列車が駅につき、扉があいた瞬間に、座席をめぐる本気の死闘を繰り広げなくてはならないチケット。
バラナシからデリーまで、10時間以上。
もし、その争奪戦に負けたら、その間座席はない。
というか、その争奪戦に勝てる見込みはほとんどない。
相手はインド人だ。
その争奪戦時には、ケンカがつきものだという。
仮にも私は女。
彼らとやりあったら、勝てる気がしない。
いや、なぜ、やりやうことを考えてるんだ。
やりあうな。
やりあうどころか、まともに逃げきれる気さえしない。
それどころか、列車には、無数の無銭乗車客たちが発生するという。
ということは、座席以上分以上の人であふれかえっている状態になるということだ。
そして、一番安いジェネラルチケットで移動する彼らは、考えなくてもわかるとおり、裕福ではない。
ジェネラルの車両では、金品の置き引き、スリが多発するらしい。
そして私は日本人。
お金を持っていると思われる外国人が、そんな場所に飛び込んで行ったら、袋のねずみだ。
そしてこの43度の灼熱の中、冷房おろか扇風機さえない車両だ。
どうする???私???
どうする???
もう、43度の気温にも、ちょっと慣れてきたし、旅する中で強くなったりしたし、
彼らとまともにやり合えないわけでもない。
かもしれない。。。
いやいやいや、
何をまた、まともに彼らとやりあうことを考えるんだ。私。
そう頭の中で思考を繰り広げていると、窓口のおじさんは言った。
「で?どうするの?」
現実に引き戻された私は、冷静に
「予約チケットを買う場所はどこ?」
と聞く。
懸命な判断だ。
そう聞くと、道路を挟んで向かい側の別の建物だということらしかった。
おじさんにお礼を言い、そこを後にし、道路を渡って教えてもらった建物に入ると、一瞬で、さっきの建物との違いを感じた。
チケットを購入するために並んでいる人たちの服装、身に着けている物は、先ほどの建物にいた人達とは、少し違っていた。
ここは、冷房や扇風機付きの、寝台車の予約チケット買う場所だ。
値段も、ジェネラル席より断然高い。
市民の階級もその分上だということ。
インドは階級社会だ。
私はさっそく、
「明日のデリー行きのチケットを買いたいんだけど」
と尋ねた。
「もう、明日のチケットは売り切れ」
「えーーー。まじ?本当に?じゃあこの並んでる人たちはなんなの?」
一瞬、嘘だと思った私は、そう聞き返す。
お行儀よく並んでいる人達に感心したばかりとは言え、ここはインド。
インドに来てから、数日経つが、もうすでに何度となく嘘をつかれてきた私は、やっぱり簡単には、インド人たちを信用しない。
「彼らは、ずっと先の日にちのチケットを買う人たちだ。明日のチケットはもうない」
そう言ってパソコンの画面の向きを変え、わざわざこちらに見せ、
「売り切れ」
の文字表示を見せてくる。
「ここはマンドゥワディ駅。中央駅に行け。そっちでなら、チケットが買えるかもしれない」
「PCに売り切れって表示されてるのに、違う駅なら買えるとかってあるの?」
「かもしれないって話だ。君、日本人?パスポートを持ってけ。日本人だってことなら、特別に席を用意してくれるかもしれない」
そう言う彼。
私は、びっくりした。
”日本人だからって特別に席を用意されることがあるかもしれない”
???
すげえ。
国籍でチケット買える可能性が左右されるのか。
そして、日本人ってそんな、良く思われてるんか。
そうして、リキシャーを拾い、デリーの中央駅に向かった私。
駅に着くと、そこは、文字通り、やっぱり”インド”だった。
駅前には、相変わらず、大混雑したピクニック会場のように、
人が地面に大量に寝転がっていた。
駅の中に入り、警備員さんに、デリー行きのチケット変える場所を尋ねると、
目立たない場所にある窓口を指さされる。
教えてもらったその窓口で、
「明日のデリー行きのチケットが買いたい」
と言うと、
「明日のチケットは売り切れ。隣の建物に行け。」
と言われる。
どんだけ、みんな、あっちに行けってたらいまわすんだ(笑)
言われた通り、隣の建物に行き、そこでチケットを買うために並んでいると、
後ろに並んだおばちゃんは、
「私は年寄りだから先にいかせろ」
と、手すりと手すりの間の狭いスペースでさえ、人を押しのけながら
我先にと順番抜かしをしていた。
私のところまで順番を抜かしながらやってくると、例外なく、彼女をは私のことも抜かし、さっさと窓口でチケットを購入し始める。
そんなおばさんの次に、私の順番が来て、
「明日のデリー行きのチケット」
というと、
「明日のデリー行きのチケットは売り切れ。マンドゥワディ駅に行け」
と言われるのだった。
「ははは。マンドゥワディ駅で、センター駅に行けって言われたばっかりなんだよ。」
散々たらいまわしに合い、インドの洗礼を受け、
私は思わず、外国人のように、やれやれのポーズをした。
しょうがない、デリーには、バスで行くとしよう。
6/28
次の記事:アールティ祭りで名倉に遭遇!?
前の記事:ヨーグルト・レモン・ライス???!!!
読んでくれてありがとうございます!
ランキングに参加しています。よかったら
ポチッと↓ヽ(*^ω^*)ノ